日常の重なりがおもしろい。最近見た映画やドラマ(特に逃げ恥)の感想。

スミマセン、当blog地理人ノート、更新せず随分放置してました。

2016年の振り返り、の前に、昨年から超少しずつ進めた「話題になっている映画やドラマは見よう!」キャンペーン。

海街Diaryに始まり・・・

いいですね、海辺の余白ある生活。(写真は江ノ電のとある駅)

・・・ 有名どころは、シン・ゴジラ。

日米関係と戦後の現実をダイナミックに届ける社会派映画としてインパクト大でした。破壊から生まれるというのも妙に説得力がありました。(写真は六本木ヒルズから撮った東京都心)

続いて、君の名は。

アニメーションは美しいと思います。架空の地図も出てきたのでああいう仕事今後受けたいな〜と思いつつ、ロマンチシズムモリモリの文学極まったモノが私は苦手で、現実味を欠いた一種の理想極まったストーリーや描写に「世界はそんなに美しくないよ」と思いながら見ていました。ちょっと疲れた。(写真は東京と岐阜の間にあるどこかの湖畔)

そして、急沸騰した「この世界の片隅に」。

事前の噂通り、遠方からの風景の映し方がとても印象的。時代は戦中戦後ではあるが、何気ない日常がずっと映されている。街の様子は、引きの全体感と目の前の情景が両方映されて、手に取るように日常がつかめる。それが今の日常とは随分違う。地名…特に呉線の駅名は連呼される…が出てくるだけでも、今の風景を思い出しながら比較するとなんとも言えない時の経過と、地理的な連続性が重なってグッと来る。あまり一個人に感情移入できない私としては、何気ないひとつひとつの日常で構成された、日常社会の全体像や時の経過のダイナミズムを、なんとも一言では言い表せないし、だから何と言うこともない、そんなリアリティを感じて、「そうか、これが世の中か…」とジーンと来たりはしました。(写真は10年前の呉線沿線から呉市付近)

そして数々の人が話題にしていた「逃げるは恥だが役に立つ」。

 

私は私なりに2つの点で釘付けだったので、私に逃げ恥を薦めたうちの新住人男性とは話が合ったのですが、それ以外の人と話したときに何かが噛み合わず、ちょっとした見方の違い〜に気づいたのでそこから。

・俳優名で言われてもわからん

芸能に弱い私ですが、さらにワタクシ、2〜3回会った人でも人の顔を覚えることができません。これは結構深刻。 皆さん劇中に出てきた人を俳優名で認識してるのね〜。ある人が「藤井隆が…」とか「石田ゆり子が…」とか言ってて、あとで調べて分かったヨ。。

あと「誰のドコがカワイイ(orカッコイイ)」ってよく聞くけど、やっぱりそういう見方になるのね〜。 あと「壁ドンが…」と言ってる人もいて、あ、そうかそういうの気にするのか…と思ったりしました。

・表裏のある街「横浜」のオモテ面で繰り広げられる恋愛ドラマとして

昨年の「デート 〜恋とはどんなものかしら〜」も、恋愛に不慣れな男女が契約書を交わして恋愛するドラマでしたが、これも舞台は横浜市でした。ロケ地として力を入れる横浜市、絵にはなります。両ドラマとも横浜市営バスが大活躍(人の顔は覚えられないがバスの柄は覚えられる)。

ところで今回は職場がみなとみらい、主人公の津崎さんが住むのが都筑区。結構遠くないか…と思いましたが、バスで行ける近い設定になってました。パッチワークで横浜のいいとこ取りをした「横浜像」ってこんな感じか〜とも思わされました。横浜は、キレイに装ったオモテ面と、威勢のいい港町というか不揃いで汚いウラ面があり、それぞれにコントラストが強く濃い都市ですが、オモテ面は全体のごく僅か。離れた位置にあるオモテ面を寄せ集めると、なるほど逃げ恥の出来上がり。

・90年代以降の「幸せ」の多様化を反映して

都市のキレイな面だけだし、インテリアがキレイすぎるし(そんなみんなキレイな家に住んでねぇよ!と思ったり)、そこだけは「君の名は」以上にキレイ過ぎるのだが、それ以外はなかなか現実味のある話。人物描写はなかなかです。

85年の男女雇用機会均等法施行以降、女性は「恋愛&結婚より仕事を選ぶ」キャリアウーマンという生き方も登場し、90年代は一つの希望ではあったものの、その世代も50前後(アラフィフ)になっているのが現在です。キャリアウーマンとは何だったのか、一巡して振り返ることができる時代になりました。最近は恋愛&結婚の成就しない姿を見て反面教師にする若年層も多いようですが、私が見る限りはバリバリ仕事もしつつ結婚もする人もいるし、一概に「仕事バリバリのキャリアウーマンは恋愛&結婚を捨てている」と一括りにするのは腑に落ちずです。(なにしろ全体的に未婚率は上昇している訳で) ただ、典型的な90年代型「キャリアウーマン」のリアルを追いつつ、こうした人々の格好良さやリアル、こうした人々なりの幸せを追ったというのは、案外光の当たりにくいところに当てたな、という印象でした。

詳細は省きますが、他にも、シングルマザーからゲイまで、多様な繋がり方を追っていたのも好印象でした。

・「状況に合わせて互いに状況に向き合い、対処する」終わりの後味の良さ

肝はココです。最終的に、良い転職先が見つかるとか結婚を果たすとか子供が生まれるとか、わかりやすいハッピーエンドは訪れません。入籍するかどうか、仕事をどうするか・・・そのへんも未定です。未定ながら「状況に応じて、お互い状況に向き合って動いていくしかない」いわば共同経営責任者として意思決定をして動いていく、その腰を据えたところ、いわばスタートラインで終わるのは、グッと来るというか、非常に納得感があるというか、それこそが後味のいいストーリーの終わり!!!でした。

・自尊感情(自己肯定感)

津崎さんは異性関係に関する自尊感情がMAXに低く、森山さんは表面的にはそんなことはないものの実はどこか満たされていないカモフラージュ層です。津崎さんの構造、共感する人は共感したし、できなかった人はできなかったんじゃないでしょうか。「異性に対する全ての(恋愛・性的)アクションが、全て相手へのマイナスになる」という信念のような「当然さ」です。恋愛や性に対して積極的になる層とならない層の差が拡がり、それぞれ違う世界に生きているのではと思うほど分断されていますが、劇中ではMAXに低い人のちょっとした仕草を如実に映していいます。恋愛的アクションも「なかったことにする」し「何もないまま済ませたい」のは、そのほうがプラス(マイナスにならない)という信念からです。私も暫くそうだった時期が長いのと、私の場合は意図的にそうしてきたので、これはよく分かります。

一方の森山さんは、一通りこなしているので、一見それなりに社会生活を送れているようですが、いくつかのつまづきや、それまで得たものもそこまで自分を満たしていなかったことで、カモフラージュされている層です。本人のちょっとした理屈っぽさや想像性は個体差なのでそこは人それぞれですが(私は好きですが)、満たされ具合で見れば、これはかなり多いと思います(し、私も人と会っていて、こういう人がかなり多いという実感を得ています)。人の心の扉を開きながら、自分の心の扉を開いていく。私も近年そんなことがあったので、ヒトゴトではないな…と思って拝見しておりました。

一つ一つは色々な何気ない日常でも、それが重なっていく・・・そこにストーリーの深みがあり、ジワッと来る何かがあります。逃げるは恥だが〜は直近で見たのが感想長めになりましたが、あとでジワッと来る作品はそういう「重なり」がおもしろかったな〜と思うまででした。今後もいろいろウォッチしていきたいですね。では!

(拾い物の画像使うのもアレだったので写真を自力でアレしたがなかなか苦しかった…)

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