立川と八王子の比較

八王子VS立川! 多摩の「首都」はどちらか検証する
http://j-town.net/tokyo/column/gotochicolumn/213721.html

という記事がありました。

1990年代までは八王子が中心だったのが、2000年代から逆転して立川に中心性が移ってきています。

拠点性の地盤沈下が続く八王子と、拠点性の成長が著しい立川の差はなかなか際立っていますが、私はその両市に挟まれた日野市で90〜00年代を過ごしたこともあり、その変化を感じざるを得ませんでした。まず、家族での外出が、90年代までは問答無用で八王子だったのが、00年代からは立川にシフトしていきます。2001年に多摩モノレールの開通で南北の軸が完成し、同時に多摩地区で最も情けなかった立川伊勢丹が、多摩地区で最もシッカリした百貨店へと変貌を遂げる等、謎の進化を遂げました。

さて、八王子と立川を比較しようとすると、市町村人口を見て思考停止になります。
多摩地区の人は馴染みのある、こちらの市町村名と人口(ないか)。多摩地区で育って、うっかり地図や統計に興味があると、絶えずこのようなものを見慣れて育ちます。

東京都多摩地区 2010年時点の市町村人口

八王子市は統計上はダイナミズムを感じさせます。しかし多摩地区民の実生活ではそこまで感じさせず、逆に人口18万人の立川の拠点性に圧倒されることになります。こうして、多摩地区で育ってうっかり地理や統計に興味を持ってしまうと、人口とは何なのか、拠点性とは何なのか、考えてもなかなか結論が出ず、モヤッとした幼少期を送ることになります。やがて多くの人は、思考停止になって「そんなもんだ」とこの現状を受け入れるようになります。確かに、そうすることが大人になることでもあるのです。

(スミマセン、早朝ですが昨夜からぶっ続けで旧市町村の人口を計算し、この図を作っていたのでノリが深夜のノリです。ご了承ください。)

話を戻しますが、八王子を「1つの市」として捉えると、それ以上のことが見えなくなります。

2つの都市を比較する際は、方程式の計算のように単位を揃えて比べないと見えてこないことも多いでしょう。
立川市の集客圏を見る際、さきほどの記事のように周辺の市をくっつけて比べて見る、というのは1つの方法です。

もう1つ、八王子市を分解する、という方法もあります。八王子市の「58万人」が一様であるはずがありません。旧由木村(現・南大沢を中心とした地域)は、特に八王子との繋がりが薄く、合併当時は反対派もかなりいたほどです。日野市との合併と、八王子市との合併で、村は真っ二つに割れ、僅差で八王子合併派が上回って八王子市に編入した、という経緯がありますが、今となっては、多摩市と対等合併したほうが良かったのでは(多摩ニュータウン)、とさえ思います。

多摩地区は平成の大合併の影響をほとんど受けていません。それ以前の大合併は50年以上前で、旧市町村の認識が身についている人は多くありません。日野市で教育を受けると、そこが旧日野町か七生村かを意識して生きるようになりますが、おとなり八王子市の旧市町村情報は全然入って来ません。なので、こうして地図を作るまで、その境界も人口バランスも知らずにおりました。

1953年当時の市町村界のまま、現在の人口になった場合の市町村人口

こちらは、1953年当時の市町村界で、現在の人口になった場合のシミュレーションをした地図です。
都市の人口の数字に惑わされてはなりません。賑わっている都市(武蔵野・立川・八王子・町田)の人口はどこも少ないですが、ある意味、単位を揃えることはできました(武蔵野市はそのままですが)。

こうして見ると、旧由井村(由井市としました)が昭島市と近い存在に見えてきて、旧川口町は瑞穂町と近い存在に見えてきます。旧由木村(由木市としました)の人口は意外と多いんですね。58万人中11万人は八王子市街地とほぼ無関係ということです。実質都市圏人口が見えてきそうです。

いやはや小河内村、ダムの影響もあって人口少ないですね…。氷川村(奥多摩駅と日原)より古里村のほうが多いのも意外でした。浅川町、恩方町、川口町、五日市町は、現日の出町と近しい存在でしょう。青梅市はあれだけ広い面積で約14万人ですが、その7〜8割は東部3分の1の面積にいることも分かります。

鶴川市、成瀬市(旧南多摩郡南村…そのまま南市にはならないだろうと仮定して)も地味に人口が多いですね。この後の集客圏分析をしたかったのですが、これは相模原市の人口を同様に分析する必要がありましたね。武蔵野市も同様です(杉並区・練馬区)。自動的にパッと計算できず、東京都統計局のページからExcelを引っ張ってきて、古地図を参照しながら町名を振り分けて計算する、という、地味な方法をとっているため意外と時間がかかります(今回は断念)。

立川と八王子の集客圏分析

さて、集客圏分析をしてみましょうか。

最も濃い色が中心部、1953年時点の中心都市です。その周囲がその中心都市の郊外にあたる部分、電車で10分以内、バスも頻繁に走っています。さらにその外側、最も色の薄い部分は、集客圏としましたが、日常的に行くには少し遠い範囲です。バスも頻繁に走っていますが、30〜40分以上かかったりします(電車で行ければさほど問題はありません)。

こうして見ると大体近い面積で、近い中心/郊外の構造を比較することができました。
人口は、立川圏が73万人、八王子圏が46万人。立川は今の賑わいに近い、実感の湧く値が出たような気がします。八王子も、まぁそんな気もちょっとはするのですが、立川に多少近い値が出ると思っていたのに・・・

問題は、グレーな話なのでグレーで塗りましたが、日野市(図中の日野市・七生市)、そして旧由木村です。以前なら明らかに八王子圏だったのが、今や日野市は立川に吸い寄せられ、由木は独立した郊外ととるか、あるいは多摩市の郊外ととるのが適切です。このグレーな市が八王子の集客圏になれば、確かに立川を凌駕する拠点性を保っていたかも知れません。

しかし、その周囲を見てみると、立川の集客動脈である青梅線の先に、さらに市町村があり、特に青梅市は10万人以上います。それに対して、八王子市は(ああ、現相模原市もちゃんと図化すればよかった…)、隣接自治体が山間部でほとんど人口はいません。都市の賑わいは、後背人口によって決まりますが、すぐに山間部が迫る八王子は後背人口を増やすのに不利だったとも言えましょう。

しかし町田市の集客圏が気になってきますね…。町田市と相模原市を合わせただけで100万人を超えますが、相模原市はなんといっても八王子市並の巨体。特に相模線沿線や旧津久井郡は町田との繋がりも比較的薄いので、そのへんのコントラストを見極めて行くと良いのかも知れません。また気が向いたら(というか時間に余裕があったら)やってみたいと思います。

最後に・・・個人的な思考実験に、合併パターンA、Bを作ってみました。私がベストだと思う案…という訳でもありません。都市の印象は非常に人口に縛られやすいので、色々考えると、固定観念が取り払われ、こういう枠組みだったら拠点性はどうなっていたか、アイデンティティはどう形成されていただろうか、等のシミュレーションも可能でしょう。

立川と八王子の現状を無視して仮定した合併パターンA

市名はテキトーです。
高尾市と楢原市が意外なインパクトを放っています。楢原市という枠組みができることで、鉄道が走っても良いのでは、という気にもなってきます。実際に鉄道が走らなかったとしても、このまま合併していなかったら、今頃BRTとか検討してそうです。いえ、きっと合併するでしょうけど。

立川と八王子の現状を無視して仮定した合併パターンB

さて、現八王子市並に合併が加速したパターンです。

合併が加速するところは、大体中心都市の中心性が明らかに高い(高かった)ことと、その周囲が自立しておらずベッドタウンになっている、という傾向にあります。八王子は昔から拠点性が高く、八王子市周辺(由木除く)の誰もが八王子を中心だと認識します。

ただ、この中でその対極にあるのが武蔵市です。吸収されてしまった周辺の市は自立しており、そして武蔵野市は特に歴史的に中心都市という訳でもありません。商業的に吉祥寺が中心性を高めているだけです。しかし、人口64万人の武蔵市などができていたら、吉祥寺は中心都市として、広い道路なり業務地区なり、いろいろ整備されて大都市市街地っぽくなっていたかも知れません。そうなるとハモニカ横丁は残らない運命でしょう。ある意味、業務機能も含めた中心都市にならず、「たまたま商業機能が集まっちゃった〜」という吉祥寺の現況は、全国的に見るとレアケースですが、ある意味良かったのかも知れません。

さて、立川市、八王子市、町田市の人口が揃ってきましたが、さきほどと似たようなことが見えてきますね。後背人口の有無です。立川市の西には10万超えの自治体があるのが強そうです。町田市もここに書いてませんが相模原市はかなりの人を抱えています。

以前、「八王子が多摩の中心性を保っていたら」というシミュレーションをしたことがあります。大型商業施設に商店街、路面電車という、中心性の極めて高い地方都市パターンです。そういう絵を描くのは簡単ですが、それを成り立たせるための架空地図として、八王子の後背人口が多いパターン(たとえば、高尾山、陣馬山を奥に追いやって平地を広くとるとか、陣馬山が多摩丘陵並の低い山だとか)を描けば、実際に成立し得る「大都会八王子」ができたのかも知れません。

まぁ、実際は大都会であってもなくても良いのだと思います。

街はどうであれ、自治体の人口の数字に縛らずに頭が柔らかくなれば、とひとまず思います。

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