北朝鮮レポート、第3回は電力と人力について。エネルギー資源と機械化に依存した近代社会のアンチテーゼのようにも思える、人力をフルに活用している北朝鮮の電力事情…もとい、”人力事情”をお届けします。
<これまでのレポート>
北朝鮮レポート(1) 近代化の前のリアリティを体感するフィールドワークとして
北朝鮮レポート(2) 純朴な美味、それが朝鮮料理
・・・北朝鮮に関する内容は、マスメディアへの掲載ができません。報道関係者の入国はできませんが、私も報道関係者者ではないため、許可を得て入国できています。この記事の内容や写真の転載は不可です。今後のレポートのためにも、よろしくお願い致します。
北朝鮮の夜
北朝鮮の日中から夜にかけての風景の変化を、見てみましょう。(移動する列車の車窓なので風景は変化します)・・・なかなか良い風景ですよ。
電力事情
世界中の大抵の場所では(極地を除いて)、夜になると暗くなりますが、電気が少ないことで、見事に「真っ暗」になります。それでも部分的に時々灯っている建物があり、高官宅か賄賂を渡している家か…等と疑ってしまいますが、平壌市市街地入ると一気に電気が明るくなります。
このように、街灯も建物も灯っています。また、某第一書記の肝入りで作られた「未来科学者通り(미래과학자거리)」アパート群はさらに力の入ったライトアップがなされています。革命的な史跡のライトアップは絶妙な光の当て方が見事ですが、ここでもその技が反映されているのかも知れません。
こちらはNASA撮影の衛星写真。平壌だけ大きな「点」になっているのが分かりますが、まさにこの通りです。
こちらは宿泊していた高麗ホテル(고려호텔)、ここでも数秒の停電を経験します。
このように、平壌市内でも頻繁に停電は発生するようです。1日4〜5回はあるでしょうか。5〜10秒程度停電するとその後復旧します。これは平壌の話で、地方では1日2〜3時間しか電気が付かないという噂もあります。夜になるとどうしているんでしょうか。緯度が高いと日も短くなるだけに、夜の人民の生活が気になります。
電力より人力
私が8年ほど前に就職活動をしていたときのこと。合同説明会のブースで、浜松市に本社を置く佐○予備校が、アツいプレゼンをして異彩を放っていました。「100万冊の教科書より佐○の情熱!」「マサイの戦士のような(以下忘れ)!」と、中堅社員がアツく語り、熱心な就活生がメモしていた光景を垣間見たのを思い出します。北朝鮮の風景を見ながら佐○予備校のことを思い出します。特に北朝鮮の場合は機械設備の更新や電力が間に合わず、外資を入れることもしない、となると、残されたパワーは「人力」なのです。
この国では「自力更生」が重視され、他国(他者)に依存せず自力であらゆることを進めることを是としています。特に1990年代以降、国の配給が行き届かなくなり、社会資本の整備も充分ではなくなります。公共的な設備についても「自力で」作ることになっている例が多々あるようです。この写真は、行政でも技術者でもなさそうな、むしろ地元農民ではないか…と思われる人々が道路工事をしている光景です。(道路が当たり前のように整備されるありがたさに、気づかされる光景です。)
人のエネルギーを最大化すべく、人力に着火する・・・佐○予備校は教科書よりアツい情熱や、一見関係なさそうなマサイを引き合いに出して、ヒューマンエネルギーの最大化を企てていましたが、この国では人力最大化と国威発揚のため、多数のスローガンが掲示されているのでは、と妙なところで繋がりました。
車が走っていないぶん、道路を行き交う人が多く見えますが、それ以上に工事に要する人員も、我々が想像している以上に多いのです。というか、工事している光景にかなりの頻度で遭遇します。工期が長く、その結果遭遇頻度が高くなるのではないかと思われます。いかに我々が機械化し、工期と人力を削減できたのか。(きっとこれは失業の話にも繋がります。さらにITによって多くの人間が必要なくなるというお話。)IT化…の前に、機械化する前の工事の様子を実見できる、貴重なフィールドです。
しかしこちら、高速道路の工事・・・土を掘り返していますが、何かここは機械というか、アスファルトというか、それを固める何かというか、そういうものが必要な気もしますが、スコップしかございません。
こちらは鉄道の踏切ですが、大きな道路と交わるところには必ず人がいます(これは大きな道路です)。列車は1日数便ですが、通らない時間帯に鉄道員は何をしているのか、というのが最近の私の興味です。
こちらは線路の保守点検でしょうか。鉄道員ではなく、一般人民のような気がします。これも地域住民が駆りだされているのではないかと邪推させられてしまいます。
現在は多くの国で信号機になってしまった交通整理員。地方都市では現役です。平壌でもたまに見かけますが、平壌はかなりLED信号機が増えています。
最後に・・・人はいませんが、電柱の数々。我々は普段、画一的、機械的な電柱しか見ていません。極めて資本主義的です。長さや傾きに差異があり、まさに電柱も手作りの味があります。
人力より強い牛力
電気を使わない力は、人だけではありません。荷役には牛が活躍しています。
全体的にちょっと株を落とす話になってしまいましたね…;
次回は、スローガンか乗り物を検討中ですが、株を落とさないように頑張りたいと思います。