イベント関連

コメディーなマンガに地図ですと?(高舛ナヲキ・ジグソークーソー空想地図研究会)

こんにちは、地理人です。
地図マンガと言えば、「ちづかマップ」が話題を呼びましたが、
先日(2016/6/24)、新たな地図マンガが発売となりました。

高舛ナヲキさん作・「ジグソークーソー 空想地図研究会」①巻(amazon
honto)です。
ネットからも一部無料公開されています。

地図漫画?いやいや、高校で起こる(ちょっとラブ?)コメディーです。
ただ、気付いたらどどーんと地図が登場したりもします。

身近に起こる壮大な?(身近なのか壮大なのか…どっちなんだ)謎解きをするのに、地図が大きな鍵になってくるのです。

著者の高舛さんとの出会いは、とあるゲームを作るプロジェクトで、彼はもちろんイラストを描く立場で、私は地図を作る立場でした。それからしばらくして顔を合わせて、地図を広げて…

地「地図を見るだけでも、その道路の模様だけで、そこが昔からあるのかあとでできたのか…色々見えてきますよね」
高「えっ?

みたいな会話から始まり、みるみる、地図の謎解きにハマっていった高舛さん。
私も色々ネタ出しはしましたが、高舛さんは実地でいろんなところを取材し、区役所や建設事務所等に当たったり、独自で色々調査したりと、好奇心の赴くままに謎解きを深めていったのでした。その軌跡とエッセンスが散りばめられています。

あ、ちなみにここで言う「空想地図」は、実在しない都市の地図…ではなく、実在の地図からの空想、のようです。念のため。

地図は物語をグイグイ深める良いカギになっています。
「地図」という、ニッチでコアな趣味の世界がある、というよりは、
「あらゆるモノゴトを深めるときに効いてくるスパイス」だと思っています。

つまり、珍味としての素材というよりは、
あらゆる食材をスパイシーに引き立たせる「胡椒」のような。

地図という、一見狭く深い箱におさまりそうな趣味ですが、いろいろな方向に棚卸しできる可能性を秘めています。
空想地図…はアート界隈にも繋がりを作る一方で、深夜のバラエティに紹介されたりもしましたが、
今回は日常コメディーの漫画です。

さて、地図は今度はどんな世界にやってくるのか、楽しみです。
ジグソークーソーも、イイところで終わっているので、続きも気になります。

あ…(思い出した)
そういえば。

「ジグソークーソー 空想地図研究会」①巻の発売記念イベントで、トークショーが開催されます。と、高舛さんのイベント紹介をする体ですが、そこに私も居合わせる(並んでお話する)ことになりました。

○開催日
2016年7月17日(日)14時~16時(予定)
○開催店舗
TSUTAYA 三軒茶屋店

詳細はこちら

それではまた〜。

<イベント情報>地図づくりワークショップ@江戸川区 編

「空想地図なんて作れる人いるの?」

誰でも作れます!なんて言うと、最初は信じてもらえませんが、しかし本当に作れます。

「空想地図づくり」ワークショップでは、誰でも空想地図を作れるキットをご用意、コラージュ感覚で地図を作るもよし、コツをつかめば自分で描くもよし。1時間半ほどで地図を仕上げてしまいます。

これまで、東京近郊各地(渋谷、川口、六本木、谷中)で実施しましたが、次回は江戸川区・松江図書館で実施。
月29日(日)14〜16時です。なんと!無料。この機会にどうぞお越しください。↓公式情報はこちら。
https://www.library.city.edogawa.tokyo.jp/TOSHOW/wp/index.php/archives/10122

(原則は窓口・電話申込ですが、難しければこちらからご連絡ください)

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空想クリエイトラボ<第1期>第2回:フィールドワーク

2月末に始まった空想クリエイトラボ。2週間ほど前になりましたが、4月10日、空想クリエイトラボは第2回、フィールドワークでした。「狭く深く」ではなく「広く浅く」つかむ形のフィールドワークです。

知識や観点を提供し、1つ1つ細部を見ていくのが一般的ですが、ここでするのは「見る人自身の感覚の延長で、ざっと全体観をつかんでいく」方法です。行くことのできない空想都市の様子を地図上からつかむため、あらゆる街の様子を、地図の模様と現実の様子を照らし合わせて比較して見てみる、という流れです。基本的には昨年の居間theaterとのコラボの際のフィールドワークと一緒です。

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車社会になる前からの人口密集地(古くからの商店街)と、車社会になって以降の新しい人口密集地(新しい市街地)を見比べます。どこでも良いですが、今回は横浜市内にしました。市街地は徒歩で、その変化が感じられるところ、住宅地はバスで、長距離の移動は鉄道で移動して、1日で「広く浅く」を効率的に回ります。

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まず、住人より外来の通勤通学客の多い都心と、人口が密集する都心近郊の住宅地、および農地が混ざるさらに郊外の住宅地の差をつかみます。日常的に見ている風景でも、なかなか連続する車窓に注視する機会はありません。車窓を見やすいよう、また、あえて日常で使わない特急列車の車窓から、視点を変えて日常を観察することにします。集中して車窓の移り変わりを見るのはここまでです。

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街は徒歩で回り、メンバーは商店街で和菓子や惣菜、果物を買ったりして日常生活をトレースしつつ、会話の契機を得て商店の人と話したりしました。また、電車の移動中は、車窓を見ることもあれば、見て感じたものを描くメンバーもいます。

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商店街…大口通商店街(大口駅〜子安駅間)の様子です。いつからあるのか、どう変化したのか、もし自分が住んだらどんな生活になるか、他の街とどう違うか、を各自感じたり比較したりします。

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商店街…鶴見駅東口〜佃野(つくの)の様子です。さきほどと近しい雰囲気ですが、アーケードの形状は異なります。道が広いほうが良いのか、狭いほうが良いのか。広いほうが良いかと思いきや、商店街の人は「広いと逆に一体感がなくなり、回遊性、賑わいが薄くなる」とも言います。

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バスで鶴見駅から新横浜駅移動します(横浜市営バス41系統)。密集した住宅地から郊外の住宅地へ。道路の広さだけでなく家の高さや密集度も変わってきます。菊名の少々北の大豆戸(まめど)交差点を前後にその様子が変わります。

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新横浜から十日市場へ移動。十日市場駅前はいかにも「郊外の市街地」です。
そこから若葉台へ移動。集合住宅が連なる団地で、ニュータウンとも称されましたが、古くからの商店街とは異なる様子です。団地中心部作られた商店群は、ファストフード店もありますが、八百屋、肉屋もあり、旧来の商店街とどこか近い面もあれば、広い通路や広場、公園等、古くからの商店街とは異なる面もあります。

「広く浅く」都市の多様な日常を、見る人の感性や日常と照らしあわせて想像する・・・このことや、多様な特性を持つメンバー同士の意見交換、目線合わせはとても重要です。これを通してメンバーがこれから何を表現し、何を制作していくか・・・次回のラボ(第3回)で検討していきます。

空想クリエイトラボ<第1期>第1回

空想クリエイトラボ第1期、はじまりました。

簡単に言うと、「空想都市のあらゆるものを、あらゆるクリエイターが想像・創造するラボ」です。見る人からしても、空想都市のあらゆるものを見てみたい、という声はあります。また、私が一人で作っても限界があるのと、将来的には私の思い通りにならず、勝手に都市が回っていくほうが、都市としてリアリティが出てくる、とも思っているので、いかに作り手を招くか、が課題でもありました。

地図は目的地と最短経路をつまみ出すツール、でもあるのですが、それはアプリ等で自動化されていくと思います。それこそ地図会社は、それ以外の地図の価値を次々に見出していく、作っていく必要があると思います。(私は地図会社の社員ではないけども)

地図は、都市の全体像や街の細部、様子、営み、匂いが読み取れるものでもありますが、そういった人は少数です。

地図は、日常の断片をまとめるような、 アルバムやスクラップ帳ようなものでもあり、 あらゆる様子や営みを包含する「目次」になる、と再定義することができると思います。

さて、作る人には何のメリットがあるのか、を考えてみました。
見どころのない中村市が、移住者や企業誘致をするのにあれこれ策を練る…のと似てそうで、似てないのは予算。ふつうにメリットを考えます。

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仕事や課題で、普段作っているもの、要求や依頼のあるもの、作りがちなもの・・・は、固まってくることが多々あります。少し違ったことをしてみたい、別の試行錯誤をしてみたい、あるいは今やっていることの延長でもっと拡げてみたい、おもしろいことをしてみたい・・・中村市をそんな、失敗できる試行錯誤の舞台として、いかがでしょうか。

また、他分野のクリエイターの目線、視点、創作はかなり刺激になります。建築学生が「建築の人としか出会わない」と嘆いていましたが、建築…にまつわる都市や空間をテーマに扱いながらも、まったく他分野の人の刺激を受けて、視点や可能性を広げる土台になれば、と思っています。

さて、本日は「空想クリエイトラボ」第1期、第1回でした。

顔合わせ&中村市の土地勘をつかむ&創作の方向性検討、でした。
メンバーと専門領域ですが、

・小池翔太さん(建築)
・小林由実さん(デザイン)
・中根泰希さん(デザイン)
・服部絵里佳さん(建築)
・山田絢子さん(料理)
・渡邉絵理さん(音声)

という具合です。ちなみに学生とサラリーマンとフリーランスと混ざっています。
学生やサラリーマンと言ってあなどるなかれ、なかなかプロいです。

そのプロさはおいおいお見せします。

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今回はメンバー募集する前にメンバーが集まっており、作ってみたいと言う人が集まったので、空想クリエイトラボという土台を作った、という経緯です。とはいえ、参加動機を聞くと、この「多分野横断クリエイティブ」に魅力を感じていると言う人も何人かいて、嬉しい限りです。私も初めての試みですが、こういったプラットフォーム、意外と少ないと思います。

初対面の組み合わせが多かったため、それぞれいまの得意分野が成り立った経緯、今後どうしていきたいか、といったことを共有し、中村市の土地勘をつかむべく「住み替え相談会」を実施。地図を見ただけでどんな街か、どんな日常か、想像つく人もいれば、そうはいかない人もいました。

そこは次回のフィールドワークで補強したいところです。あらゆる街のパターンを、1日でつかみ、日常を把握する引き出しを増やして、皆さんのクリエイティブに活かしたいところですね!

では。

「創造・想像」の先をつくる…2/27イベントでお話します

こんばんは、地理人です。

2月27日(土)19時〜、建築界隈のイベントで対談させていただきます。
たいそうなタイトルで、私でダイジョブか、と思いましたが、大丈夫そうです。そう思っている皆さんも、↓この記事の話に興味が湧けば、とてもおもしろいと思います。

「創造・想像」の先をつくる-メンテナンス時代のクリエイションを考える-
(HEAD研究会)
※事前にチケットの購入が必要です。こちらからどうぞ。
http://peatix.com/event/146521/view

山道さん「熟・ポジティブ」の秘訣

ところで、主催で建築家の山道(さんどう)さん、かなり健康的な感じが印象的です。

そもそも建築家って、そんなに不健康な人を見かけませんが、多くの建築家は、大きく、かつ細かく、組み立てることに神経を集中した、ピリッと決まったシャープさが感じられます。

器用な手先で繊細に組み立てることもあれば、トンカチで釘を打つような力仕事まで、と言うと、模型づくりと木工に限ったニュアンスで伝わってしまいますが、施主の意思、意図、環境、法令といった条件を調整して一つの形に整える力と、それを整えるための細部の技巧が必要で、どこかその職人たる雰囲気は、無駄をそぎ落とし、背筋の伸びた、まさに家を支える柱のような人が多いな、と思っておりました。

山道さんは少々それとは異なる雰囲気です。事務所もスタートし始めで、産みの苦しみもありそうな時期ながらも、熟した余裕ある雰囲気を放ち、フラットに非常に近づきやすいのもまた印象的です。その雰囲気もあってか、ビビらずに私もベラベラしゃべってしまったので、話も合い、イベントに呼んでいただく流れになりました。

次の手を打っていくこと、そして私にはない(笑)果てしなくポジティブなエネルギー・・・そのエネルギーを放ちつつ、なぜ余裕があり、ムラやブレなく動いてるのか、ナゾだったので聞いてみました。

すると、夜は良い時間で切り上げるし、休みの日もとる、無理はしない、とのことでした。山道さんの師匠もそのポリシーだったみたいで、健康的な建築術には起源がありそうですが、彼の、多くの人が羨むであろう「熟・ポジティブ」は、それはそれでオンリーワンなのではないかと思います。

ガウディなのかダヴィンチなのか

もう1人のゲスト、岡啓輔さんは、お会いしたことはありませんが、10年以上1つの建物を建て続けておられる方です。と聞いてすかさず「ガウデ○・・・」の文字が浮かびましたが、安直にそう言う人は多いだろうと思って言うのをやめました。でも、三田のガウディ、と呼ばれているみたいです。

しかし、この方は建築・・・なのでしょうか。建物を建てると言えば、建物の全体像を描く建築設計という行為から始まりそうです。

岡さんは、マクロに「作る」行為をしつつ、それとは対照的に、ミクロな面・・・「数百年持つコンクリート」づくりの試行錯誤を繰り返していたり、どうやら建物が建つまでの0から100までの全ての過程を自らの手で整える、という、とてつもなく手間のかかることをしています。その結果として、まだ建物は建たない、ということのようです。

大型化、効率化のため、作業の役割は細分化される・・・この現象は、製造業でも、医療の世界でも、経験してきたことです。多くの専門的な人員の連携プレイにより、一人では成し遂げることのできない大型物件、大量生産、あるいは果てしない種類の症状への対処を果たしているのが、現代社会です。

ただ、その人が担当する分野しか成し遂げられず、専門分野に特化すればするほど、全体像が見えなくなるのは、また問題でもあります。

岡さんが、自身の手と感覚でそれを追っていくのは、そういった細分化へのアンチテーゼでしょうか。学問が細分化されず、あらゆる学問や技術を横断して極めていた時代と言えば、レオナルド・ダ・ヴィンチをも思い出します。

私の、建築の世界への恐れ

いやはや、毎度毎度言ってしまうのですが、これまで、ホンモノの建物を建てられる建築家、本当に都市をデザインする都市計画家、というものに恐れおののき、近づくのを躊躇していたのです。

私はそれと比較すると、アジアの市場で売られる「偽ブランド品メーカー」のような心境でした。全く既存の何かをコピーしたり、それを高値で(も安値でも)売ったりはしてないのですが、限りなく実現可能性の高い「らしさ」「それっぽさ」を追求していたのでした。

でもホンモノの人々にはスミマセン、と、また建築の人々もピシッとしてるので、そう思ってたのです、が・・・

建築界の閉塞感

山道さんの話は、逆からのアプローチでした。
「建築家は、施主の意向を反映することしかできない。」

奴隷…と言うと言い過ぎですが、自身の意向を反映して作る機会は、意外とないのです。建築は、料理や音楽と異なり、1つモノを完成させるのに、恐ろしいお金と時間がかかり、法令をクリアする必要があります。トライアンドエラー、なんてできない訳です。

別の若手建築家も言ってましたが、時代の流れがポストモダンになれば、完全にそれに翻弄される・・・これは王に仕えたバロック時代の音楽家に通じるものがありそうだ、とも思いました。

私の空想地図は、言い換えれば、(ちょっと言いすぎですが)都市が成立する過程や、それによって起こる事象、変化、それをむら無く観察し、地図に映しながら、あらゆる過程や事象の変化をシミュレーションすることで、現代社会を研究する、みたいなことになります。

言いすぎずに直感的に言うと、「都市って何をどうすると、どうなっちゃうのか、好奇心のままに試している」ということになります。「スイカに塩入れると、甘くなっちゃうんだ!」とか、そういう試行錯誤です。

施主もおらず、原価もかからないゆえ、やり放題です。たしかに、この探求は施主や時代の意向に翻弄されてはいません。

建築家が建築するとなると、「1億円のスイカに1千万円の塩を入れるシミュレーション・・・」みたいな感じでしょうか。たしかに、不可能に近いでしょう。
なるほど、そういう閉塞感を感じていたのか・・・目から鱗でした。

続きは会場で

・・・というわけで、私も建築の世界に触れるのは新しい発見であり、
別のアプローチから、建てるという行為を検証、探求している方は、大いに刺激になりそうです。

建築界隈のイベント、と書きましたが、建築関係でない人も、この内容に興味がある方は、どなたでもお越しください◎

http://peatix.com/event/146521/view

「中村電鉄 (電車)時刻表」(鳴海行人 作)/ 中村市をめぐる万物収集報告展

先日、東京・台東区谷中「HAGISO」で行われていた展示「中村市をめぐる万物収集報告展」で、昨日鳥瞰図について書きましたが、本日は時刻表の作者、鳴海氏が自身のnoteで詳しく綴っています(https://note.mu/mistpouffer/n/nd718bffc1865)。

なにしろ首都圏(といっても実在の東京を中心とした首都圏ではなく、架空の西京を中心とした首都圏)の通勤電車ゆえ、電車の本数が多く、平日だけなのにかなりの枚数とインパクトを放っていました。その上、字が小さくて見えない。笑

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いやー何のことやら!

見えない、画面で見たい・・・というそこのあなた、実は見られます。鳴海氏のWebで見ることができます。

→ Fiction Diagram(中村電鉄)
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「鉄道」に対する悩ましさ

さて。

鉄道については、私自身なかなか悩ましい立場でもあるのです。
じつはこの架空の地図を描くという趣味を始める人の大部分が、鉄道に対する興味や知識を持っており、非常に親和性が高くもあるのです。…ということは、言わずもがな、そうだろう、と思う人も多いかも知れません。

いや、しかし逆に、「地図を作るならまず鉄道だよね!(それ以外は二の次)」とばかりに、鉄道に偏重するのもまた問題でした。私もうっかり鉄道への興味や知識を持ちあわせていましたが、それは私が都市生活者で、幼少期から両親と出かけるときは車ではなく電車だったためで、多くの人の生活の基礎に「鉄道」があるとは限りません。

また、都市は鉄道からできるか、と言われると、大抵の場合はそうでもなく(これが大都市郊外だと本当に鉄道から街ができるんですが)あらゆる要素が加わってきます。

そのため、鉄道以外の要素…歴史や地形、道路、公共交通であればバス等、幅広い「都市を構成する要素」に目を向けるため、鉄道偏重を避けるべく、私自身「鉄」分を減らした経緯もあります。

「鉄道」の重要性と、他の重要な要素

とはいえ、なんで鉄道なんでしょう。

他の架空地図作者が地図に興味を持った経緯を探ると、少し見えてきます。鉄道の他、「小さい頃から父親にドライブに連れて行ってもらった」と語る人は、幼少期にあらゆる道路やインターチェンジ等が多分に含まれた地図を描いています。鉄道も道路も、どこかの地域と他の地域を結ぶもので、空間の広がりやネットワークを考える際は重要なファクターとなります。

他には1人、「送電線の広がりから興味を持った」と言う人もいました。たしかに送電線も、地域と地域を繋げる重要なファクターです。

その他あるとすれば、水道管、とかでしょうか。水道管はなかなか見えないので、なかなか触れる機会もなく、ネットワークを考えるのも難しいかも知れません。

さて、鉄道に戻りますが、鉄道だけに偏重すると良くない、と思いつつ、原点に帰ると鉄道は「都市生活者の日常を構成し、他都市とのつながりを考えるのには重要な要素」ということになります。

鳴海氏の試行錯誤

鳴海氏は今回鉄道ダイヤの人、として参加していますが、実はこの人も鉄道偏重には違和感があるようで、もともと道路好きを発端に、バスにも興味を持ち、鉄道にも興味がある、という人です。

それ以上に彼のnoteの他の記事を見ても分かる通り、鉄道とかバスとか道路とか・・・言う前に、人生を試行錯誤中でもあります。

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すんません当ブログで何回も登場します、この図。

彼はA層の中にいましたが、B層と違ってかなり人が多いのです。
彼もなかなか律儀で、これまでの人生であるべき姿や目標、期待、そのための努力…といったことを割と素直に進めてきました。そんな感じで進学、就職、といった進路を進めつつ、趣味ではA層として、部活やサークルで活動していたようですが、どれもちょっと無理をしていたようです。

仕事ならまだしも、余暇活動の趣味でも無理が出ていた、というのは私からすると悲しい話ですが、そうするしかない、とも思っていたようで。それでとある私のイベントで、たくさんのC層の人たちがいて、普通に楽しく話ができたのが衝撃だったようでした。

そうなのですよ。C層は何も特徴もつかみもないようですが、楽しいのです。そして、良いコミュニティを選べば、A、B層に偏見もなく、受け入れてくれるものでもあります。よほどA、Bの趣味が近い人よりも人間的に通じる、信用できる人がいる、なんてことも珍しくありません。

A、Bような濃い味はなくても、シンプルでさわやかな栄養分、まさにミネラルウォーターのようなものかも知れません。

敢えて全然違うことをしても良いと思うのですが、強みを活かすなら、せっかくならA、B層向けだけでなく、C層にも展開してみよう、ということで彼にも参戦してもらい、会期中に色々思うことがあったようで、さきほどのnoteで色々まとめられています。

「鉄道マニアの極めた趣味」というよりは、「この街どんくらい電車走ってるんだろ」とか「終電何時だろ」とか、そんな日常感覚の延長で見てもらえれば、というのが狙いなので、時刻表慣れした人が読み解けるような今回の列車時刻表だけでなく、駅の時刻表や、都市の日常が感じられる一端なんかを表現できると良いね、と、鳴海氏と私で話しております。

「平川市街地 80年前の鳥瞰図」(中田匠 作)/ 中村市をめぐる万物収集報告展

先日、東京・台東区谷中「HAGISO」で行われていた展示「中村市をめぐる万物収集報告展」で、ひときわ注目を集めていたのが鳥瞰図でした。

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今も昔も中村市内で最も賑わうのは平川駅周辺ですが、左が現在の平川市街地の地図、右が80年前の鳥瞰図です。こうして比べて見ると違いが分かりますが、現在の中電百貨店のところに駅舎があります。これは、現在の中村電鉄京中線(西京・榊山方面へ繋がる路線)が別会社だった頃のものです。京中線を運行していた京中電鉄と中村電鉄が後に合併し、駅舎を統合して、旧駅舎の跡地が中電百貨店と中村高速バスターミナルになっているようです。

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こちらは中村市内の鉄道路線の変遷です。路面電車の時代から地下鉄の時代へと変貌を遂げました。

他にも、今は廃止された路面電車が現役だったり、旭丸百貨店は当時から街のランドマークであった様子が読み取れます。

中田さん本人の解説があってこそ、実は2倍以上楽しめるのですが、中田さんは盛岡市在住。会期中にはいませんでしたが、最後の撤収の日に私もいろいろ種明かしが聞けたのでした。

事前の打ち合わせをほとんどせずに、地図情報と、上記の鉄道変遷事情のみを伝え、あとは中田さんにお任せしたのですが・・・驚くほど齟齬なくピッタリで・・・驚くほどでした。私は80年前の中村市を知る生き字引・中田さんから、平川の街の様子を教えてもらったようでもあります。

なお、中田さん本人がブログで触れていますので、よければこちらもご覧ください。
http://birds-eye-view.blog.so-net.ne.jp/2015-12-08

新聞社の輪転機など、詳しいことが書かれています◎

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<開催報告>「中村市をめぐる万物収集報告展」(@HAGISO)

東京・台東区谷中「HAGISO」での展示「中村市をめぐる万物収集報告展」は本日最終日ですが、足を運んでいただいた皆様、ありがとうございました。

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展示の様子を簡単に紹介しますと・・・

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右側には、空想都市・中村市をつかむさまざまな情報があります。地理感覚をつかみたい方は、地誌のような解説、地形、人口(ちなみに並べた西京市の統計は大幅に間違っています)、地理感覚がない人にはイメージでつかめるようなタウンガイドやグルメガイド、ロゴです。

こういった街の断片を頭の中で継ぎ合せるだけでも、少しずつ街のイメージが見えてくるのではないでしょうか。(※このうち半数はWebでも見られますが、半数は今回初公開です。おいおいWebにもアップします。)

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中央部には大判で中村市の空想地図が展示してあります。この空想地図はWebでも見られますが、じつは「地図を遠くから眺めて、全体感をざっとつかむ」ことで、いつも見えないものが見えてきます。普段はWebやスマートフォンで、目的地の「点」を探すために地図を見ている人が多いと思います。

敢えて、現在地も目的地もなく、全体感眺めると「土地勘をつかむ」ような感覚を得られたり、ズームアップしたりズームアウトしながら、何か気になるポイントを発見したり、ということができます。

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左側は、この空想都市・中村市の様子を別の角度から眺めたものです。私ではなく、それぞれの表現手段を持ったスペシャリストが、中村市の日常を映す欠片を制作しています。鉄道時刻表(鳴海行人氏)、住民票と国庫債券(架空公文書作家・olo氏)、80年前の平川市街地の鳥瞰図(鳥瞰図絵師・中田匠氏)です。

都市を形成するあらゆる断片があることで、立体的に都市に見えて来ること、この断片がどこにあるかが気になる際には、地図を見るとどこの話かが繋がります。地図あらゆる日常の欠片を映す目次になっています。

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こちらは鳴海さん作の時刻表。スペースの都合で平日のみの掲載ですが、実際には休日ダイヤもあります。時刻表読解力と多少の視力がないと見えませんが、中村市内の大手私鉄、中村電鉄の時刻表です。中村市を構成する首都圏の中心、西京(榊山駅)へのアクセスも読み取れます。終電もチェックできます。

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続いてoloさんの公文書。じつは右の住民票、コピー防止機能がついています。oloさんと私でセブンイレブンに行き、コピー機でコピーすると「COPY」と出てくるので、いよいよリアリティもここまで来たか・・・と思ったものです。本来は紙幣を出す予定でしたが、今回は見送り、またまたマニアックな国庫債券が登場しました。これは私も実物を見たことがないので、どう似ているか分かりませんが、物々しさだけは感じるので、リアルかどうか知らないのに勝手にリアリティを感じます。

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最後に中田匠さんの鳥瞰図。これは語れば奥が深いひと品。中村市内で最も賑わう平川市街地の80年前の様子です。中央の大きな建物は今も地域一番店となる旭丸百貨店。その前の橘山交差点はカギ型街路だったのが、道路の拡幅とともに直線になろうとしています。一番の変化は、平川駅が2つあること。これは、中村電鉄(現日根川線)と、京中電鉄(現中村電鉄京中線)が別の会社だった頃のお話。これが後に直通し、当時の京中電鉄の駅は平川高速バスターミナル、中電百貨店になっています。また、中村電鉄日根川線の平川〜中村間(地図の左上、鉄道線路の下にあるできかけの橋脚)は工事中で、下にレールが置いてあるのもみどころです。

(いまさらですが、こういうことを展示開始時に投稿すれば良かったのですね・・・反省;)

「会場に私がいると展示のおもしろさが倍以上になる」という声をいただいたのにほとんどいられずスミマセン。(作家が本業ではないのです・・・)

また、展示だけでなく、付随する濃いイベントが2回ほど行われました。

*11/22
<開催報告>「ようこそ中村市!ワークショップ&引越し相談会」

*11/27
<HAGISO クロージングトーク 議事録・備忘録> 「中村市をめぐる 万物収集報告」クロージングトーク/今和泉隆行(地理人)×石川初(地上絵師)×宮崎晃吉(建築家・HAGISO代表)

展示や、周囲の表現活動をする人々との交流を通じて、私の「作家活動?」について考えるきっかけにもなりました。それについてはこちらの投稿でお届けします。

最後に、中村市の日常を構成する断片となる、現実感溢れる制作物を用意していただいた、中田匠さん、oloさん、鳴海行人さん、今回の展示の契機をいただいた青木彬さん、HAGISOの宮崎晃吉さん、展示に大きなスパイスと栄養を与えた居間theaterの皆さんに感謝致します。

11/27 クロージングトーク(今和泉隆行×石川初×宮崎晃吉)

東京・台東区(谷中)HAGISOで行われている展示「中村市をめぐる 万物収集報告」もいよいよ終盤を迎えています。

今和泉隆行(地理人)×石川初(地上絵師)×宮崎晃吉(建築家・HAGISO代表)
の3名で、クロージングトークを行う予定です。

http://hagiso.jp/art/2015_11_nagomurushi/

本日 11月27日[金]21:30 – 23:00
¥1000(1ドリンク付)予約不要です。是非お近くの方、お時間のある方、お越しください;

(写真は、本件の打ち合わせでも何でもなく…偶然に3人が集まった際に撮られた写真)

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<開催報告>11/22「ようこそ中村市!ワークショップ&引越し相談会」

11/22(日)、居間theaterとの共催で「ようこそ中村市!ワークショップ&引越し相談会」を実施しました。これは、現在東京・台東区(谷中)のHAGISOで行われている「中村市をめぐる 万物収集報告展」内のイベントになります。

午前の部は、既に任意のイベントや公共施設、大学等で実施し、今回で累計7回目となる「空想地図を作る」ワークショップ。「地図なんて描いたことない」人がほとんどです。風景や距離感を置き換えるスキルがなくても、簡単に地図模様が作れるキットを用意。これを1〜2時間で仕上げて、できた街の様子から日常を想像する、というものです。
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作り始めは「一体どうやって作ったら良いんだ」と手が止まる人もいますが、あまり考えずに細かく切り刻んで組み合わせを試行錯誤していくうちに、少しずつ形が見えてきます。
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地図シートを組み合わせて模様を作る人もいれば、ペンで線を描いたり塗ったりして仕上げていく人もいて、地図の作り方も十人十色です。
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できた地図もまた、十人十色です。
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午後の部は、居間theaterによる「中村市 引っ越し相談会」でした。

これまで、1回のフィールドワーク、2回のミーティングを経ています。
都心から郊外に向かう電車の車窓から風景の変化を観察し、都市圏の広がりと成立起因、現状の差異を観察。また、実際の街を3箇所回って、それぞれの街の全体像や日常を味わい、空想都市の土地勘をつかむ材料を得ました。その上で、空想地図上の土地勘をつかみ、実際にメンバーで空想都市内での生活をイメージして、当日に至っています。
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中村市北区、荒蓋駅前にあるエキスパートホーム荒蓋店のスタッフとして、居間theaterメンバーと地理人が、空想都市・中村市への住み替えをナビゲートします。
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やはり一人ひとり、ぴったりな街も物件も違います。
「オススメ・ベスト!」なんて、一概に決めつけられないものです。それぞれの「ベスト」は違うのだ、ということを主催側も実感しつつ、来る人もまた実感したことと思います。
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この日は延べ20〜30人の方が空想地図を見ながら(空想都市を訪れ)、間取図を見ながら物件を検討し、多くの人が物件を決めて帰られました。

会場内では、地質調査業の人から日本語古語の研究者まで、ニッチな専門分野を極めた人からふらっとやってきた人まで、地図を囲みながらそれぞれ深めたい部分の解像度を上げて楽しんでいた人もいました。

この「ニッチな専門分野を極めた人から、ふらっとやってきた人まで」というのがミソで、ニッチ・オブ・ニッチの人にも、特にこれまで地図に興味を持ったことがない人にも楽しんでいけるものができてこそ、地図は「万物を映す、ビジュアル・目次」という、本来の価値、可能性を発揮するものと思います。これについてはまた地理人ノート内で追って書きたいと思います。

当日お越しいただいた方、関心持っていただいた方、万物収集報告の制作者・中田匠さん、oloさん、鳴海行人さん、そして居間theaterの皆さん、ありがとうございました。

なお、当日お越しいただいた方に、blogにまとめている方もいるので、こちらもあわせてご覧ください。

架鉄@コラムシフト(Phase2)Vol.111 ようこそ中村市!ワークショップ&引越し相談会(木下次郎さん)

note 中村市をめぐる万物収集報告展に行ってきた(ATUSIさん)

展示は11/29まで続きます。私自身、ほとんど展示会場にはいませんが、11/27(金)はHAGISO代表の宮崎さん、地上絵師の石川さんを交えてクロージングトークを行います(予約不要)。ご関心のある方は、この機会に直接お話できればと思います。